平面上のベクトル

 

何を学ぶのか
 小学校以来,いろいろな量を習ってきました。重さ,長さ,厚さ,広さなどがそうです。これらはいずれも単位を付けて10g,2mなどのように数を用いて表され,それらについての足し算,引き算も行うことができました。5mの紐と10mの紐の合計は15m,といった具合です。

 同じ量でも「風量」,「力の量」となってくると少し事情が違います。例えば秒速5mの風と秒速10mの風を足したら15mの風になる,とは限りません。風がお互いに曲がって吹いていたり,逆向きに吹いていたりするかもしれないからです。また,力の量も同じで,5の力と10の力を合わせて,15の力になるとは限りません。力をかける方向によって変わってくるからです。

 量にははじめに触れた「単純な量」と,後に触れた「複雑な量」があります。あとのほうの量には向きがあり,その向きによって性質が変わってきます。向きを伴わない単純な量を「スカラー」といい,向きを伴った複雑な量を「ベクトル」といいます。ベクトルを表すには有向線分(矢印)が適当です。点AからBへ向かう有向線分を記号でAB(本当は→をABの上にかぶせます)と書いたり,1つの文字を使ってaと書いたりします。

 この章ではまずこの新しい量「ベクトル」の加法,減法を学習します。

 次に,ベクトルを数値化するため,ベクトルの成分について学習します。これはベクトルの始点を座標平面の原点に置いたときの終点の座標です。成分を利用すればベクトルの加法,減法は簡単に計算できます。

 ベクトルの分野で大切な概念に「内積」があります。これは2つのベクトルに対して定まる実数で,片方のベクトルが他方のベクトルと共に行った「仕事」の量を表す数値です(→内積の意味)。内積はベクトルの「掛け算」のような性質を持っています。

 ベクトルの始点をある基準点Oにあわせることで終点が平面上のどこかの点を指しますが,このとき全てのベクトルは平面上のどこかの点と必ず1対1に対応します。つまり,平面上の点の位置を表すのにベクトルを用いることができます。このときの「点A位置を表すベクトルa」を点Aの位置ベクトルといい,記号でA(a)と書きます。基準点をそろえて平面上の点にベクトルを対応させるという考え方は,ベクトルを利用して図形問題を解く際の大切な考え方になります。A(a),B(b)のとき,線分ABの中点,内分点,外分点の位置ベクトルがどうなるか,あるいは△ABCの重心の位置ベクトルがどうなるかも学習します。

 最後に学習するのが図形のベクトル方程式です。直線や円の方程式は学習しましたが,これらはベクトルの言葉を用いて表現することができます。このベクトル方程式はあらゆる図形の方程式の起源ともいえる,重要な意味を持っています。
何が出来ればよいか
@ ベクトルの和,差が作図できる。
A ベクトルの成分計算ができる。・・・(3,2)+2(-1,4)=? など
B 内積の公式を覚える。
    a・b=|a| |b|cosθ(基本形)
    a・b=a1b1+a2b2(成分が分かっているとき)
C 中点,内分,外分,重心の位置ベクトルが求められる。
D 基準点から伸びた2本のベクトルを用いて,他のどんなベクトルも表せる。

※この分野が苦手な人は,まず以上の@〜Dが出来るようになってください。


勉強のポイント
 ベクトルは高校数学の中でも厄介な分野です。新しい概念が多く,1度聞いただけではなかなかピンとこないことが多いのですが,計算やパターン自体は決して難しいことはありませんので,例題を丁寧に見ていけば解けると思います。
 ベクトル分野の問題は非常に単純で,パターン化しやすいものばかりです。いくつか紹介しましょう。
     ・ベクトルaとbが平行・・・・・・b=Kaと書ける。
     ・ベクトルaとbが垂直・・・・・・aとbの内積が0。
     ・問題文中に「角」という言葉・・・・・・内積公式a・b=|a||b|cosθに代入
     ・三角形の中に交差する線分・・・・・・s:(1−s),t:(1−t)とおく。
     ・3点A,B,Pが同一直線上・・・AP=kABと書ける。
などです。これだけ押さえておくだけで,とりあえず問題文を読んだあとどうしていいかさっぱり分からない,という事態は避けられます。
 また,上のDについてはベクトル全体を通して,絶対にできなければならない技術ですが,教科書ではあまり力を入れて説明がされていません。これについては予習シートのコーナーにプリントを用意してありますのでご覧ください。
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