すり抜ける次元
「次元」という言葉は色々な日常場面でも使われますね。

「あの人のやっていることは普通の人とは次元が違う」とか,「次元の大きな話だ」とかいった風に,レベルというか,ステージというか,そういった意味合いで使われることが多いようです。

また,某国民的マンガの主人公は「4次元○ケット」というものを持っていて,その中には無限に広い空間があることになっています。空間の大きさを表すときにも「次元」という言葉は使われることがあります。

----------------------------------------------------------------------------

本来「次元」という言葉は数学・物理学の用語です。それぞれで少々意味が違いますが,共通して言えるのは「ある空間を表すのに必要な要素の個数」であるということです。

私たちが生活しているこの空間を考えましょう。空間のある地点の「住所」をきちんと定めようと思ったら,最低でもいくつの情報が必要でしょうか。

例えば空中にぴたっと止まっている気球の位置を測るためには,どこかの基準点から「南へ100km」,「東へ50km」,「上空へ5km」といったように,3つの情報が必要になります。この意味で,私たちが生活する空間は「3次元」であるといいます。
(数学ではここまでですが,物理学ではさらに突っ込んで,「位置を特定するには,その時刻も必要である」と考え,最低限必要な情報は4つ,ということで,私たちの生活する空間は「4次元」である,とする場合もあります。)


もし私たちが「上空」とか「地下」という世界を持たず,地面の上を這いまわるだけの生物だったとしたら,私たちの居場所を決めるのに必要な情報は「南へ100km」,「東へ50km」という2つだけです。つまり,平面は「2次元」ということになります。


私たちが「横への広がり」を持たず,「前か後ろだけ」という一直線の世界の生き物だったとすると,私たちの居場所は「南へ100km」と伝えるだけで分かります。つまり,直線は「1次元」ということになります。



空間は「3次元」,平面は「2次元」,直線は「1次元」。



これは,結構多くの方がご存知の事かも知れません。

----------------------------------------------------------------------------

では,私たちのいる世界が3次元だとするならば,4次元というのはどのような世界なのでしょうか?


結論を申し上げると,4次元空間がどんな世界なのかを,直感的に理解することは不可能です。それは,私たちは3次元空間の生き物だから。


「生き物は,自分の世界より高い次元のことは分からない」


のです。


それではこんな例え話をしましょう。


1次元の世界に住む生き物がいました。適切な例えが思いつかないのですが,線路の上を前か後ろにしか走れない,列車のような生き物だと思ってください。

この線路の前と後ろの方に1枚ずつ壁を作ってやると,この生き物は閉じ込められてしまいますね。前にも後ろにも進めなくなりますから,彼は脱出することができなくなります。

2次元の世界の生き物がこれを見たら,笑ってしまうことでしょう。

「バカだなァ,横の方に逃げればいいのに・・・」

でも,1次元の世界の生き物にとって,「横」とは想像もできない世界なのです。



かく言う2次元の生き物(水の上を這うアメンボのような)も,前後左右を壁で囲まれてしまったら身動きが取れません。むなしく壁で囲まれた世界を這い回るだけで,脱出はできなくなります。

3次元の世界の生き物(つまり私たち)がこれを見たら,笑ってしまうことでしょう。

「バカだなァ,上を飛ぶか,下に潜るかして逃げればいいのに」

でも,2次元の世界の生き物にとって,「上下」とは想像もできない世界なのです。



そんな私たち3次元の生き物だって,前後左右,および上下を囲まれてしまったら身動きが取れません。それはそうです。金庫のようなものに閉じ込められているのですから,壁を破らない限り,脱出することは不可能です。


でも,4次元の世界の生き物がこれを見たら,笑ってしまうのです。

「バカだなァ,『こっち』の方向から逃げればいいのに・・・」

でも,3次元の世界の生き物にとって,「こっち」とは想像もできない世界なのです。

----------------------------------------------------------------------------

一言でいえば,4次元空間とは,3次元空間よりも1つだけ「方向が広くなった」世界のことです。しかし,どんな例えをもってしても,それを直感的に認識することはできません。

金庫に閉じ込められた状態から,壁を壊すことなく脱出するなんて,私たちにとっては「超魔術」としか思えない芸当です。



次元が上がることによって,一つ世界が広がっていく・・・


神隠し,瞬間移動といった,私たちの世界に伝わる「超常現象」は,実は4次元の世界の生き物による仕業じゃないのかな,とは,数学好きな私の勝手な想像・・・ですよね,きっと。

日刊『中・高校教師用ニュースマガジン』第1824号掲載