二項定理の意味としくみ
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 二項定理という定理があります。授業で習った人は見たことがあると思いますが,見た目にもなかなかインパクトのある定理です。



 目がチカチカしますね。言いたいことがいろいろあるのでは?

 「何でCが出てくるの!?」
 「aやbがあったりなかったりするのはなぜ?」
 「一般項って何だ!?」
 「長い!」

 などなど,正直なところ完全に理解できている高校生は少ないような気がします。

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 二項定理は,二項に関する定理ですから,(a+b)とか,(x+y)のように,2つの「項」がある式を相手にしています。もちろん,   
 3x-4yや,a
2-3bcという式も「二項」です。

 (a+b)の1乗はa+bです。
 (a+b)の2乗はa
2+2ab+b2です。
 (a+b)の3乗はa
3+3a2b+3ab2+b3となります。

 ここまでは展開公式として学習しますし,覚えている人も多いと思います。

 (a+b)の4乗や5乗,いやいや,10乗や100乗だってやろうと思えばできるわけですが,正直,キリがありませんし,公式として覚える気力も湧きません。

 そこで,「とにかく(a+b)の何とか乗はこうなる!」という風に,すべてを1つにまとめた公式が作られたわけです。これが,「二項定理」になります。

 二項定理は,中学高校で習った「展開公式」の親玉,と考えてもらえればよいと思います。

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 「パスカルの三角形」というのを御存知でしょうか。



 上の図のように,(a+b)を1乗,2乗,3乗した式を縦に並べ,文字を無視して係数だけを拾った「数の三角形」を,「パスカルの三角形」と呼んでいます。この三角形には2つの特徴があります。

 1つ目の特徴は,ある行の2つの数を足すと,その下の行の数字になるということ。

 図には載せていませんが,パスカルの三角形の一番下の段「1 5 10 10 5 1」の更に下の段は,「1 6 15 20 15 6 1」となります。これは(a+b)の6乗の係数を表します。この規則を使えば,7乗や8乗の係数も簡単に調べることができます。

 2つ目の特徴は,この「数の三角形」は,すべて「組合せ」を表す記号Cで表現できること。

 つまり,例えば(a+b)の5乗であれば,下の図のような関係になっているということです。



 これは,一番初めに紹介した二項定理で,nに5を代入したものですね。
 二項の展開をすると,その係数はCを用いた規則的な配列になっているのです。

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 まだ肝心なことを説明していません。

 「どうして二項の展開をすると,係数が組合せ記号Cで表されるのか」

 ということです。確か,Cって場合の数や確率の分野で使う記号でしたよね。
なぜ,多項式の展開係数に登場してくるのでしょう?

 では,先ほど出てきた(a+b)の5乗を例にして説明しましょう。

 (a+b)
5を展開したときにできる項の種類を考えてみます。a5やb5という項が出てきますし,a3b2という項も出てきます。

 a
3b4という項は絶対に出てきません。なぜなら,「5乗している」からです。
 a,b合わせて,全部で文字の個数は5個でなければなりませんから,a
3b4のように,文字が全部で7個ということはあり得ないわけです。

 もっと詳しく説明しましょう。

 そもそも,多項式の展開は,下の図のような「分配法則」を利用して行われるものです。1つ目の( )の中のa,bどちらか1つと,2つ目の( )の中のa,bどちらか1つをかけ合わせていき,最後に同じ項(同類項)は1つにまとめて答えます。



 上の図の場合で,例えば1つ目の( )からb,2つ目の( )からaを選んでかけたとすると,その結果「ab」という項が発生します。2つの( )から文字を選び出すパターンは以下の通りで,それぞれ1個ずつ項ができます。

  1つ目の( )からa,2つ目の( )からa → a
2という項ができる。
  1つ目の( )からa,2つ目の( )からb → abという項ができる。
  1つ目の( )からb,2つ目の( )からa → abという項ができる。
  1つ目の( )からb,2つ目の( )からb → b
2という項ができる。

 さて,(a+b)の5乗の話に戻りましょう。
 これは,(a+b)(a+b)(a+b)(a+b)(a+b)という式を展開するのと同じです。( )が5つ並んでいます。
 さすがに分配法則は大変なのですが,大切なことは,
  「5つ並んだ( )のそれぞれからa,bのどちらかを選び,選んだ5個の文字をすべてかけると項ができる。」
 ということです。

 例えば,a
3b2という項は,どういう選び方をしたときに発生するのかというと…



 図のように,5つの( )のうち,どれか2つからb,残りからaを選んだ場合にできることになります。
 最終的にaを3つ,bを2つ取ってくればよいわけですから,選ぶ方法は1通りではありません。

 何通りあるのか。
 5つある( )の中から,2つの( )でbを選ぶ訳ですから,選び方は5C2通り」あるということになります。
 ついにここで,組合せの考え方が登場したわけです。

 あるいは,最終的にaaabbの5文字がそろえばいいから,この5文字の「同じものを含む順列」の並び方を考えて
   5!   通り 
 3!2! 
 としても構いません。いずれにしても,a3b2という項の作り方は場合の数を利用して計算し,10通りあるということになります。

 (a+b)
5を展開すると,大量の分配法則計算がおこなわれ,偶然「5つの( )中,2つの( )でbが選ばれた」場合にだけ,a3b2が作られる。その結果,5C2個の a3b2が作られるから,

 「a3b2の係数は
5C2

 ということになるわけです。

 (a+b)
5の,分配法則で作られるすべての項を見てみましょう。

  a
5という項は,「5つの( )中,0個の( )でbを選べばできる」→ 係数は5C0
  a
4bという項は,「5つの( )中,1つの( )でbを選べばできる」→ 係数は5C1
  a
3b2という項は,「5つの( )中,2つの( )でbを選べばできる」→ 係数は5C2
  a
2b3という項は,「5つの( )中,3つの( )でbを選べばできる」→ 係数は5C3
  a
1b4という項は,「5つの( )中,4つの( )でbを選べばできる」→ 係数は5C4
  b
5という項は,「5つの( )中,5つの( )でbを選べばできる」→ 係数は5C5

 以上,すべてまとめると,



 が成り立つというわけです。

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 いくつか練習しましょう。

 (a+b)
7を展開したとき,a5b2の係数は,7つの( )中,2つの( )でbを選べばよいから,7C2
 (x+y)
20を展開したとき,x13y7の係数は,20個の( )中,7個の( )でyを選べばよいから,20C7

 少し表現を変えます。

 (a+b)
10を展開したとき,10個中3個からbを選んでくると,10C3a7b3という項ができる。
 (x+y)
8を展開したとき,8個中k個からyを選んでくると,8Cka8-k bkという項ができる。

 突然「k」などという文字を入れてしまいましたが,長〜い二項定理の中で,いちいち「1個選ぶとき」,「2個選ぶとき」,「3個選ぶとき」,・・・等と羅列するのは大変なので,一般化して「k個選ぶとき」と考えることがあるのです。
 上の(x+y)8の例だと,あらかじめ8Cka8-k bkを準備しておけば,あとは「k」の部分だけ0,1,2,3・・・と代入していけばすべての項が作れて便利なわけです。
 このように,「k個選んできたとき」を考えて作った項を,二項定理の「一般項」と呼んでいます。

 実際のところ,二項定理は式が長いので,フルに書き出して使うことはあまりありません。大抵の場合は,○○という項の係数は何か?というのを調べるために,この一般項の考え方を使うことが多いと思います。

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 すでにお気づきの方もいらっしゃるでしょうが,

 (a+b)
5の展開でa3b2の係数を考えるとき,

  「5個中2個bを選ぶ」

 と考えても,

  「5個中3個aを選ぶ」

 と考えても,結果は同じですから,係数は
5C2でも5C3でも構いません。

 つまり,(a+b)
5の展開式は,次のように書いてもよいことになります。



 二項定理は,(a+b)
nであれば,「bを何個選ぶか」を基準にして書かれていることが多いのですが,aを基準にして計算しても問題はありません。

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 最後に応用です。二項ではなく,三項の式(a+b+c)
10を展開したときの,a2b3c5の係数はいくらになるでしょうか。

 まず,10個の( )の中からaを2個選ぶ → 
10C2
 次に,残った8個の( )の中からbを3個選ぶ → 
8C3
 残りは自動的にcが5個選ばれるから,以上より係数は,
10C2×8C3

 または,最終的にaabbbcccccの10文字がそろえばいいから,この10文字の「同じものを含む順列」の並び方を考えて
   10!  
 2!3!5! 

いずれにしても,係数は「2520」です。

 このように,項が増えた場合も同様に考えることができます。

 三項以上の展開で,係数を求めるこの方法を「多項定理」と呼んだりもしますが,重要なことは定理を覚えることではありません。多項式の展開の係数に,順列・組合せの考え方が応用されている,というのはなかなか面白い事実です。
 この点を理解しておけば,いろいろな問題で応用がきくと思います。


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