1.そもそも「次元」って何?
「次元」という言葉は色々な日常場面でも使われますね。
「あの人のやっていることは普通の人とは次元が違う」とか,「次元の大きな話だ」とかいった風に,レベルというか,ステージというか,そういった意味合いで使われることが多いようです。
また,某国民的マンガの主人公は「4次元○ケット」というものを持っていて,その中には無限に広い空間があることになっています。空間の大きさを表すときにも「次元」という言葉は使われることがあります。
本来「次元」という言葉は数学・物理学の用語です。それぞれで少々意味が違いますが,共通して言えるのは「ある空間を表すのに必要な要素の個数」であるということです。
私たちが生活しているこの空間を考えましょう。
空間のある地点の「住所」をきちんと定めようと思ったら,最低でもいくつの情報が必要でしょうか。
例えば空中にぴたっと止まっている気球の位置を測るためには,どこかの基準点から
①「南へ100km」
②「東へ50km」
③「上空へ5km」
といったように,3つの情報が必要になります。この意味で,私たちが生活する空間は「3次元」であるといいます。
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※ちなみに数学ではここまでですが,物理学ではさらに突っ込んで,
「位置を特定するには,その時刻も必要である」
と考え,最低限必要な情報は4つ,ということで,私たちの生活する空間は「4次元」である,とする場合もあります。
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2.私たちは「3次元の生き物」,では4次元ってどんな世界?
もし私たちが「上空」とか「地下」という世界を持たず,地面の上を這いまわるだけの生き物だったとしたら,私たちの居場所を決めるのに必要な情報は
①「南へ100km」
②「東へ50km」
という2つだけです。つまり,平面は「2次元」ということになります。
さらに,もし私たちが「横への広がり」を持たず,「前か後ろだけ」という一直線の世界の生き物だったとすると,私たちの居場所は
①「南へ100km」
と伝えるだけで分かります。つまり,直線は「1次元」ということになります。
空間は「3次元」,平面は「2次元」,直線は「1次元」。
これは,結構多くの方がご存知の事かも知れません。
では,私たちのいる世界が数学的な(時刻という要素を考えない)3次元だとするならば,4次元というのはどのような世界なのでしょうか?
実は,とても残念なことを申し上げるのですが,
結論としては,4次元空間がどんな世界なのかを,直感的に理解することは不可能です。それは,私たちは3次元空間の生き物だから。
「生き物は,自分が住む世界より高い次元のことは分からない」
のです。
3.私たちが4次元空間をきちんと認識するのは無理
それではこんな例え話をしましょう。
1次元の世界に住む生き物がいました。
適切な例えが思いつかないのですが,線路の上を前か後ろにしか走れない,列車のような生き物だと思ってください。
この線路の前と後ろの方に1枚ずつ壁を作ってやると,この生き物は閉じ込められてしまいますね。
前にも後ろにも進めなくなりますから,彼は脱出することができなくなります。
2次元の世界の生き物がこれを見たら,笑ってしまうことでしょう。
「バカだなァ,横の方に逃げればいいのに・・・」
でも,1次元の世界の生き物にとって,「横」とは想像もできない世界なのです。
かく言う2次元の生き物(水の上を這うアメンボのような)も,前後左右を壁で囲まれてしまったら身動きが取れません。
むなしく壁で囲まれた世界を這い回るだけで,脱出はできなくなります。
3次元の世界の生き物(つまり私たち)がこれを見たら,笑ってしまうことでしょう。
「バカだなァ,上を飛ぶか,下に潜るかして逃げればいいのに」
でも,2次元の世界の生き物にとって,「上下」とは想像もできない世界なのです。
そんな私たち3次元の生き物だって,前後左右,および上下を囲まれてしまったら身動きが取れません。
それはそうです。金庫のようなものに閉じ込められているのですから,壁を破らない限り,脱出することは不可能です。
でも,4次元の世界の生き物がこれを見たら,笑ってしまうのです。
「バカだなァ,『こっち』の方向から逃げればいいのに・・・」
でも,3次元の世界の生き物にとって,「こっち」とは想像もできない世界なのです。
4.それでもどうしても4次元空間を見る方法
一言でいえば,4次元空間とは,3次元空間よりも1つだけ「方向が広くなった」世界のことです。
① 縦
② 横
③ 高さ
に加えてもう一つ,
④「こっち」
とでもいうべき方向がある世界です。
3次元空間では,3本の直線がそれぞれ垂直になるようにすることができます。ご自分の部屋の天井の角っこを見れば,3本の線が集まっているのが見えますよね。
4次元空間では,4本の直線を,それぞれがお互いに垂直になるように交わらせることも可能です。
しかし,どんな例えをもってしても,それを直感的に認識することはできません。
金庫に閉じ込められた状態から,壁を壊すことなく脱出するなんて,私たちにとっては「超魔術」としか思えない芸当です。
ただ,何とかして4次元空間の姿を認識したいならば,方法がないわけではありません。
例えば私たちは,紙や黒板の上に立体の見取り図をかいたりしますよね?
2次元空間である「平面」上に,3次元空間である「立体」の見取り図をかくことはできるんです。
ということは,もし空気中に字を書くことのできる鉛筆があったなら,3次元空間に4次元空間の「見取り図」をかくことは可能です。
最近は3Dプリンターや,樹脂を使って空中に線が引けるペンもあったりしますので,「4次元立方体」などの具体的な立体を実際に作成することは可能ですし,実際に作成している方もいるようです。
次元が上がることによって,一つ世界が広がっていく・・・
神隠し,瞬間移動といった,私たちの世界に伝わる「超常現象」は,実は4次元の世界の生き物による仕業じゃないのかな,とは,数学好きな私の勝手な想像・・・ですよね,きっと。
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