指数と対数,という風にセットで語られることが多い「対数」という考え方。
少しわかりにくい概念ですが,簡単に説明しますと,
aを何乗したらMになるかを表す数
ということになります。
例えば,
①質問「2を何乗したら8になるか」 →答えは「3」
②質問「3を何乗したら243になるか」 →答えは「5」
このような質問に対する答えのことを,対数というのです。
質問と答えをひとまとめの数式にして表す方法がありまして,上の例ならば
①log28=3
②log3243=5
と表現されます。記号「log」の登場ですね。数学用語としては
①「2を底とする8の対数は,3」…「2を何乗したら8になるか,答えは3」
②「3を底とする243の対数は,5」…「3を何乗したら243になるか,答えは5」
という風に用いられています。少し込み入ってきましたが,とにかく,
logaMとは,「aを何乗したらMになるか」を表す数だ,ということだけ抑えていただければ大丈夫です。
ところで,log25,つまり「2を何乗したら5になるか」の答えはいくらでしょう。
言い換えると,「2□=5」という式の,□に入る数字はいくらでしょう。
・・・そんな数字ないでしょ!?
と思われるかもしれません。□に入る数字を整数だと決めつけてしまうと,確かに答えはありません。
22=4
2□=5
23=8
という関係を考えれば,□に入る数字はおそらく2と3の間の小数になるでしょう。
実際,□=2.3219280948874…という,ずいぶん細かい小数が答えです。
22.3219280948874…=5
log25=2.3219280948874…
というわけですね。
このように,対数の答えはきれいな数ばかりではありません。
対数のいいところは,どんな数字でも「ある数を基準」にしてレベル分けができるという点にあります。例えば2を基準にすると,
4は22だから,レベル2
8は23だから,レベル3
128は27だから,レベル7
という具合です。小数も使っていいとなると,
5は22.3219280948874…だから,レベル2.3219280948874…
という表現も可能ですから,どんな数でも2を基準にしてレベルを付けられることになります。
特に10を基準にしたレベル分けは,様々な場面で活用されいるんです。
対数は本当にいろいろな分野で活躍しています。その大きな要因は,対数の2つの性質
①logaMr=rlogaM
②logaxy=logax+logay
にあります。特に底が10のものは常用対数と呼ばれ,最も多く応用されています。
身の回りには「10n」で表現される数値がたくさんあります。
化学では分子量や濃度を,例えば「6.0×1023」のように表現したりしますし,天文学では恒星間の距離を,測地学では地震のエネルギーの大きさを表すのにこの「10n」という表現を使います。要するに,巨大な数値を扱わなければならない分野で,頻繁に出てくる表現です。
例えばある量を「レベル」別に分類したいとします。
しかしその量は,紙に書くのが大変なくらい巨大な桁数の数値になるとします。
ア) 3245,イ) 536710932,ウ) 37482930418948550028394610
くらいまでなら何とか書くことが出来ますが,あんまり大きいようだと
エ) 0.37×1034
といった書き方も必要かもしれません。
これら数値の桁数を,そのレベルと呼ぶことにすると
ア)の場合は「レベル4」
イ)の場合は「レベル9」
ウ)の場合は「レベル26」
という風に定義できます。
エ)の場合は,「1034」と部分を見れば,すぐに「レベル34」だと分かりますね。
つまり,「A×10n」(ただし0<A<1)という形にしてしまえばその数は「レベルn」だと分かることになります。
数の大きさを,指数だけで表現してしまおうというのです。
こうすることで,どんな巨大な数でも効率よく,nという小さな数で分類することが出来ます。
もう少しきちっといえば,これは対数による定義だといえます。数のレベルは,その数に「log10」をつけてみて,
log10(A×10n)=log10A+log1010n=log10A+n
とし,その整数部分nである,と約束してしまえばよいのです。
対数の性質①,②のおかげで,巨大な数をキレイに分解し,簡略化することが出来るのです。
対数は
さて,難しい話が続いてしまいましたが,この「数のレベル」が利用されているものに次のものがあります。
(1) 水素イオン濃度・・・pH,水溶液の酸性,アルカリ性の尺度
(2) マグニチュード・・・M,地震が震源で持っているエネルギーの尺度
(3) 星の等級・・・○等星,星の明るさの尺度
(4) 音・・・デシベル,音の大きさの単位
例えば「pH8」とか「マグニチュード7.2」とか,「2等星」とか言いますよね。
乱暴に言えばこれらは全部「水素イオンの濃度が○×10-8」,「地震のエネルギーが○×107.2」,「地球から星までの距離が○×102」という風に表された結果です。(本当に雑な言い方なので,きちんと勉強したい人は専門書を調べてくださいね。)
10を「1」,100を「2」,1000を「3」,10000を「4」という対数の感覚,こんなにも身近な分野で大活躍しているんですね。
対数の発明は,このような巨大な数を扱う学問,特に天文学の分野に計り知れない貢献をしました。
上の例だけでも十分それは分かるのですが,対数がもたらした最大の功績は,実は「計算革命」にあります。それは次回お話しましょう。
コメント
数学は苦手ですが頑張ろうと思いました。有難うございます。