ありがとう,対数(2)
常用対数表(簡易版)
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
1. 0.0000 0.0414 0.0792 0.1139 0.1461 0.1761 0.2041 0.2304 0.2553 0.2788
2. 0.3010 0.3222 0.3424 0.3617 0.3802 0.3979 0.4150 0.4314 0.4472 0.4624
3. 0.4771 0.4914 0.5051 0.5185 0.5315 0.5441 0.5563 0.5682 0.5798 0.5911
4. 0.6021 0.6128 0.6232 0.6335 0.6435 0.6532 0.6628 0.6721 0.6812 0.6902
5. 0.6990 0.7076 0.7160 0.7243 0.7324 0.7404 0.7482 0.7559 0.7634 0.7709
6. 0.7782 0.7853 0.7924 0.7993 0.8062 0.8129 0.8195 0.8261 0.8325 0.8388
7. 0.8451 0.8513 0.8573 0.8633 0.8692 0.8751 0.8808 0.8865 0.8921 0.8976
8. 0.9031 0.9085 0.9138 0.9191 0.9243 0.9294 0.9345 0.9395 0.9445 0.9494
9. 0.9542 0.9590 0.9638 0.9685 0.9731 0.9777 0.9823 0.9868 0.9912 0.9956
上の表をご覧ください。常用対数表といいます。
表の左端の縦列が1の位,表の上端の横列が小数第1位を表しています。例えば「4.6」を意味するところに「0.6628」と書かれていますが,これは,「log104.6=0.6628」であることを表しています。
つまり,いろいろな数値の常用対数を,計算して書いてくれてあるわけです。

面白い事実をお見せしましょう。簡単な例で,次の2つの計算について

    @ 3.2×1.5=4.8
    A 9.3÷3.1=3.0

まず@についてですが,式の中に出てくる3つの数値についてその常用対数は

      3.2---「0.5051」     1.5---「0.1761」     4.8---「0.6812」

となっています。これらの常用対数を見て何か気づきませんか?

実は,「0.5051+0.1761=0.6812」となっているんです。つまり,掛け算が苦手な人は,3.2×1.5をするとき,それらを常用対数に直して足し算し,足した答えを表の中から探せば「4.8」という答えが分かることになります。

更にAについて,式の中の3つの数値を常用対数に直すと,

      9.3---「0.9685」     3.1---「0.4914」     3.0---「0.4771」


となっています。今度は「0.9685-0.4914=0.4771」となっています。だから,表から2つの数値の常用対数を読み取って引き算し,その答えを表から探せば,「3.0」という答えが得られることになります。

何が言いたいのかというと,この表があれば,足し算,引き算が出来る人なら,難しい作業をすることなく掛け算,割り算の答えが「読めて」しまうということです。もちろん,この表だと出来る計算に限界がありますが,もっと小数点以下を増やした表をあらかじめ準備しておけば,どんな桁数が多い掛け算,割り算でも,表を読むだけで答えが分かってしまうことになります。

では,なぜこの表で掛け算,割り算が出来るのでしょうか。@の計算で説明すると,

          log103.2+log101.5=log10(3.2×1.5)=log104.8

が成り立つことで分かってもらえるでしょう。そう,対数をとると,掛け算は足し算に変わるんでしたね。Aについてもまったく同じで,割り算だから引き算に変わっているというわけです。

近世の天文学者たちは,恒星という,巨大な大きさや距離を持ったものを相手にさまざまな計算を,紙の上で行わなければなりませんでした。計算といっても,ヨーロッパでの話です。われわれが使っているような算用アラビア数字,あるいは筆算という便利なものはなく,時計の文字盤に使われているローマ数字で計算しなければならなかったわけですから,2桁×2桁の計算でも,われわれ東洋人の何十倍の手間と時間が必要でした。まして何十桁の計算となると雲をつかむような話となり,あるひとつの計算をするだけで一生を費やした天文学者もいたほどです。

そんな中,対数の考えが生まれ,常用対数表が発明されました。対数は巨大な数に簡単に「レベル」をつけることが出来(前回を参照),数の扱いを簡単にしてくれたばかりか,あれだけ労力を費やしてきた掛け算,割り算を,簡単な足し算,引き算だけで出来るようにしてくれたのです。これにより,天文学者たちは煩雑な,しかも本題に直接関係のない単純計算の手間から開放され,その後の天文学は飛躍的に発展しました。このことを,私は「対数による計算革命」と呼んでいます。

さて,この対数による計算,実は電卓が発明されるまでのある一定時期,日本でも使われていました。皆さんは日本の伝統的な計算機といえば「そろばん」を思い浮かべるでしょうが,昭和の初期から中期までは,日本の小,中,高等学校で大活躍していた計算機があったのです。

それは,「対数計算尺」と呼ばれる道具です。(簡略版を予習シート1年次3-12に付けてあります

仕組みを簡単に言いますと,定規のような棒が2つあり,それぞれに対数の目盛りがついています。この2本の定規を,計算したい2つの数値で合わせると,定規の右端や左端に答えが現れる,という非常に便利なもので,慣れてくれば4桁の掛け算,割り算が数十秒で出来るようになります。電卓の発明までは計算機といえばこれのことで,どの学校でもこれの使い方が教えられていました。

今はもう見かけることのない計算尺ですが(私は1器だけ入手して持っています),対数の役割を伝える道具として,大変興味深いものです。見かけたら,使ってみてくださいね。