1.何を学ぶのか
【指数関数について】
3+3+3+3を略して「3×4」と書くように,3×3×3×3も略して「34」と書きます。このとき,右肩の小さな数「4」のことを累乗の指数と呼ぶことは中学校で学習したと思います。
高校ではaxと書いたとき,aを底(てい),xをその指数と呼ぶことになります。
この指数xは,あくまでも掛け算を繰り返した回数のことですから,1,2,3,・・・という自然数でなければなりませんでした。
この分野ではこの,「指数は自然数でなければならない」という常識を覆し,30,3-2,31/2,31.24というように,指数を実数にまで拡張することを考えます。
こうなると,「指数は掛けた回数である」という言い方では説明がつかなくなってきます。そこで注目するのが,本来指数がもっていた,ある重要な性質です。
指数については,指数法則と呼ばれる性質が成り立ちます。この法則が成り立つことを前提にし,「0乗」や「-2乗」や「1/2乗」といった指数が何を意味するのかを定義していきます。
「y=ax」という形の関数は,指数関数と呼ばれます。いろいろな事情からaは1を除く正の数でなければなりませんが,指数関数はこの底aが1より大きいときと小さいときで,まったく性質が異なっています。
もしaが1より大きいならば,xが大きくなればなるほどaxの値は大きくなりますが,aが1より小さいならば,xが大きくなればなるほどaxの値は小さくなります。このことは,この分野のさまざまな問題の随所で大きな意味を持ってきます。
【対数関数について】
指数関数の分野では,axのxを,実数にまで拡張しました。つまり,a1.2とか,a√2といったような,自由な指数を用いることが出来るようになったわけです。
「 2x=4 」や「 2x=8 」 を満たすxはすぐに分かるでしょうが,「 2x=5 」を満たすxとなると即答は出来ません。5は4と8の間にあることからxは2と3の間にあるだろうという予測は立ちますが,手計算ではその値を正確に把握することは困難です。
そこで,ax=Mが成り立っているとき,x=logaMと書く,という風に記号の約束をし,これをaを底とするMの対数と呼ぶことにします。
この表記を用いて,先ほどの「 2x=5 」を満たすxは「 x=log25 」である,と書き表してしまうのです。axは常に正でしたから,Mも常に正です。これを真数Mの条件といいます。
「ax=M」が「Mはaのx乗である」と訳せるならば,「x=logaM」は「xはaを何乗かしてMにするような数である」と訳せます。言っていることはまったく同じです。主語と述語が入れ替わっているだけの表現です。
つまり,対数表現は指数表現の「逆」であるといえます。
指数にも法則があったように,対数にも法則があります。対数の法則はとても個性的で,数も少ないので,慣れてくればさまざまな計算を自由に行えるようになります。また,底を自由に変換することの出来る公式もあります。
y=logaxの形の関数は,対数関数と呼ばれます。「対数は指数の逆」であることを裏付けるように,対数関数のグラフは指数関数のグラフのx軸とy軸を入れ替えたものになります。対数関数のグラフも指数と同様,底aが1より大きいか,小さいかで2種類に分かれます。
グラフから,底aが1より大きいならば,xが大きければ大きいほどlogaxの値は大きくなりますが,底が1より小さいならば,xが大きければ大きいほどlogaxの値は小さくなります。これは対数の大小比較の際の注意点です。
底が10である対数には,特に常用対数という名前がついています。巨大な数の桁数を求めたり,さまざまな応用があります。
2.何ができればよいか
【指数関数について】
① 指数法則
am×an=am+n, am÷an=am-n, (am)n=amn, (ab)n=anbn
を用いて計算が出来る。
② 30,3-2,32/3のような値が何を意味しているのか(その値を)答えられる。
③ 2√2,1/8,3√4といった数値が,2の何乗になるか答えられる。
④ y=axのグラフを,aが1より大きいときと小さいときの区別をしてかくことが出来る。
⑤ 指数方程式4x=8が解ける。
⑥ 3つの数2-1,4√8,1/4 を,小さい順に並べられる。
⑦ 指数不等式(1/2)x<(1/8)が解ける。
※この分野が苦手な人は,まず以上の①~⑦が出来るようになってください。
【対数関数について】
① 指数表現ax=Mと,対数表現x=logaMを,自由に言い換えられる。
② loga1=0, logaa=1であることを理解できる。
③ 対数の3大性質
logaMN=logaM+logaN, loga(M/N)=logaM-logaN, logaMr=rlogaM
を使って,対数の計算が機械的に出来る。
④ 底の変換公式を使って,底を変換できる。
⑤ 対数関数y=logaxのグラフを,底aの値に応じて書き分けられる。
⑥ 対数方程式log2x+log2(x-1)=2 を,真数条件に気をつけて解くことが出来る。
⑦ log215, 3, log481を小さい順に並べることが出来る。
⑧ 対数不等式log2x+log2(x-1)<2 を,真数条件に気をつけて解くことが出来る。
⑨ 常用対数を用いて,240が何桁の数か求められる。
※この分野が苦手な人は,まず以上の①~⑨が出来るようになってください。
3.勉強のポイント
【指数関数について】
指数の計算は,ルートが残った状態で行うより,指数の表現に直し,上の指数法則①をつかって行ったほうが圧倒的に楽です。ですから指数法則4つはしっかり頭に入れ,自由に使えるようになっておきましょう。そのためには,どんな数でも「ax」という形に直すことが出来なければいけません。
つまり,③のような操作を一生懸命練習する必要があります。
指数計算には,次のような手順があります。
1. √の式はaxの形に直す。
2. 底aを全てそろえる。
3. 指数法則を用いる。
また,計算のコツとして,「底はなるべく小さく分解する」ということを覚えておいてください。
例えば4x=8を解くときは,左辺の底は4,右辺の底は8ですが,4は「22」,8は「23」というように,もっと小さな底「2」に分解することが出来ます。こうすることで方程式は(22)x=23,つまり22x=23と変形されます。
ここまでくれば「2x=3」ということから,xが簡単に求められます。
不等式のときは,1点だけ注意が必要です。上の手順に従って,最後の式が22x<23になったとしたら,指数だけを抜き出して「2x<3」としてよいのですが,もし最後の式が(1/2)2x=(1/2)3となったとしたら,「2x>3」のように,不等号の向きを変えなければなりません。
底が1より小さいときは,このような,大小関係の逆転現象が起こるのです。これが指数関数の分野でもっとも注意を要する性質です。
【対数関数について】
対数のそもそもの意味を理解することも必要ですが,とにかく③の「対数の3大性質」を使って機械的な計算がすばやく出来るようにならなければなりません。対数のあらゆる計算は②,③,そして
次に述べる計算のコツを使えば出来ます。そのコツとは
1. 単項の計算 loga□は,「loga△r」の形にする。
2. 多項の計算は,「loga□±loga△」の形(計算の基本形)にし,3大性質を使ってまとめる。
の2つです。2.の基本形とは,それぞれのlogの前に係数がなく,底aがそろっている状態です。もしそうなっていないときは3大性質の3つ目の式や,底の変換公式を使って,基本形を作ってください。
対数方程式,不等式を解くときは,まず真数条件をチェックし,必ず「loga□=loga△」, 「loga□<loga△」の形を作ってください。その後,方程式ならば「□=△」とすればよいのです。
不等式の場合は,指数のときと同様,底aが1より大ならば「□<△」で構いませんが,底aが1より小ならば「□>△」という逆転現象が起きます。注意しましょう。
桁数の問題では,桁数の原理を理解しましょう。例えば「x=3024は4桁」ですが,これは「1000<x<10000」つまり「103<x<104」であることから分かります。「104」の「4」の部分に桁数は現れてくるのです。
10n-1<x<10nと表すことが出来たら,xはn桁の数である
これが桁数の原理です。
これを利用して240が何桁の数か求めるのであれば,10n-1<240<10nのような不等式を作る必要があります。そのためには,「240は10の何乗なのか」ということが分かればよさそうですから,「240=10x」とおいて,xを求めてみましょう。
この式から「x=log10240」となりますから,右辺を計算すれば「x=12.04」となります。つまり,「240=1012.04」と分かりましたから,1012<240<1013となり,13桁だと分かります。
求めたい数の常用対数をとることで桁数が求められるのは,上に述べたような理由からです。