デジタルは魔法の”手”? 〜2進法の意味
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新緑の色彩まぶしい5月の空。

ゴールデンウィークも終わり,「ハァ,次の楽しみは夏休みかァ・・・」なんて指折り数えてため息をつく子どもたちの姿が目に浮かびます。

折りしも中学校,高校では中間テストが終わり,成績が分かる頃。点数が上がった,下がった,順位が上がった,下がったと「指折り」数える頭の痛い日々を生徒たちは送っている時期かも知れません。

・・・と,ここまで読んでこられた読者の方は

「ハテ? この連載は確か数学の話じゃなかったっけ?」

といぶかしく思っていらっしゃるでしょうが,今回のテーマはこの「指折り」のお話です。

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人間は,指を折ってものが数えられる唯一の動物です。

この指を折って数を数えるという動作から生まれた有名な言葉があります。

「デジタル」という言葉です。

英語で書くと「digital」ですが,もともと「digit」とは「指」のこと。近年巷で当たり前のように使われている「デジタル」の本来の意味は「指で数えること」なのです。

でもどうですか? 皆さんの「デジタル」のイメージは違うでしょう?

デジタルと聞いて思い出すのは「指」ではないでしょう?

私なんかは,デジタルと聞いて真っ先に思い出すのはストップウォッチとか電光掲示時計とかの,数字がピコピコ変化する「デジタル時計」の類です。

じんわりじんわり秒針が動いていって,「ああ,今だいたい12時30分を回った頃だな」という大雑把なアナログ時計とは違い,秒針がシャキーンシャキーンと変化していき,「只今12時31分43秒! 以上!」という曖昧さのかけらもない,白か黒か,0か1かはっきりしろ!と力強く迫ってくるというのがデジタルのイメージではないでしょうか。

何がどうなったら,この「デジタル」と指が関わってくるのでしょう?

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人間には片手に5本の指がついています。

片手だけで,いくつまで数を数えられるかご存知ですか?

・・・5? と自信なさげに答えていらっしゃる方もおいででしょうが,何と片手だけで31まで数を数えることができます。

はじめにすべての指を折りたたみ,手をグーの形にします。これが0です。

次に親指を立ててください。これが1。

次に親指を折りたたみ,人差し指を立ててください。これが2。

さらに親指を立ててください。先ほど立てた人差し指はそのままです。これが3。

親指,人差し指を折り曲げ,中指だけを立ててください。これが4。

・・・と,この調子で書いていくと長くなるので,少し省略して書くことにしましょう。折り曲げている状態を「0」,立てている状態を「1」を書かせてください。

小指,薬指,中指,人差し指,親指の順に,0か1をあてがっていきます。

例えば全部の指が立っていれば,「11111」,小指と中指だけが立っていれば「10100」,全部折り曲げてあれば「00000」と表現します。

これで先ほどの指の折りたたみを説明していくと,

「00000」→0,「00001」→1,「00010」→2
「00011」→3,「00100」→4,「00101」→5
「00110」→6,「00111」→7,「01000」→8
「01001」→9,「01010」→10,「01011」→11
「01100」→12,「01101」→13,「01110」→14
「01111」→15,「10000」→16,「10001」→17
「10010」→18,「10011」→19,「10100」→20
「10101」→21,「10110」→22,「10111」→23
「11000」→24,「11001」→25,「11010」→26
「11011」→27,「11100」→28,「11101」→29
「11110」→30,「11111」→31

となりまして,5本の指だけで0も含めた32通りの数を表現することができるのです。

両手を使うと指が10本に増えますから,0も含めて1024通りの数が表現でき,足の指まで入れると0も含めて1048576通りの数が表現できます。人間の指をうまく使えば,政令指定都市の人口さえ数えることができるわけですから,その情報量の多さには驚かされます。

もっとも,「足の中指と小指だけを立て,残りを折りたたむことができるのか?」と言われると困ってしまいますが・・・

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このような指で数を数える方法,お気づきの方もいらっしゃると思いますが,「2進法」と呼ばれる発想です。指は「折るか立てるか」のどちらかですから,それを数字の「0か1か」に置き換えていったわけです。

「0か1か」という発想は,私たちが持っているデジタルのイメージそのものです。

数学的にみると,デジタルの利点は大きく2つあります。

@ 情報量が多い。
A 情報が単純化される。

@についてはお分かりでしょう。人間の全指で100万以上の数を数えられるわけですから。

Aについてですが,デジタルは曖昧さを許しません。「指が半分だけ立っているから0.5」なんてことはありえないのです。どんな状態も必ず0か1かのどちらかに変換して考えますので,多少の無理は起こりますが,その分,情報は単純に,処理しやすくなります。

カセットテープの音は,あらゆる曖昧な音も,曖昧なまま全部録音してくれます。0.5の音も,0.8の音も,そのまんまの曖昧さで,全部録音してくれるのです。

ところがそれを再生するときには困ったことになります。機械の性能やテープの劣化により,0.5の音が0.47のように読み取られてしまったりするのです。

記録した情報が曖昧で複雑なために,再び読み取るときに情報が誤解されて伝わる可能性がある。環境の変化にも弱い。これがアナログ記憶の欠点です。


それに対してCDやMD,DVDなどの記憶媒体では,情報をすべて0か1かに細かく分けて記憶します。1秒間をものすごく細かい瞬間に分け,その瞬間の中にAという音があればAの欄に1,音がなければ0という風に記憶をしていくわけです。

記憶していく段階で多少の無理は起こりますが,一度記憶してしまえば0か1かの単純な情報ですから,読み取るのが簡単です。

傷がついたりして1が0.9に変化してしまっていても,読み取る側で修正ができます。「デジタルだから0.9ってことはありえないので,ここは1だろうな」と判断ができるからです。

情報が誤解されずに伝わり,環境の変化にも強い。これがデジタル記憶の利点です。

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現在はデジタル隆盛の社会。

コンピュータや音楽,映像に至るまで,デジタルのお世話にならない日はありません。

昨年末から,地上デジタル放送も始まりました。単純確実な「0か1」データで映像が送られてきますから,アンテナの電波によって画像が乱れたり,砂嵐が入ったりということはほとんどなく,大変美しい画質で映像が楽しめるようになりました。

指折り数える人間の本能から,美しい映像技術が生まれていることに,時には思いを馳せてみるのもいいかも知れませんね。


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