2次方程式・2次関数の分野で登場する「平方完成」という考え方。
方程式の解を求めたり,特に2次関数のグラフを考える際に,放物線の頂点の座標を求めるため避けては通れないテクニックです。
ただし,慣れないうちはなかなか上手くできず,高校数学で挫折する1つのポイントになっているのも事実。特に係数が奇数のときや,x,y以外の文字が含まれるとき等,複雑な場合もあります。
この記事では,手順に従って誰でも簡単に平方完成ができるようになる方法を紹介していきましょう。
「平方完成」は,2次式に対して行うものです。
例えばx2+4x+4という2次式は,因数分解できますよね。
x2+4x+4=(x+2)2
このように,2次式を変形して( )2という式を生み出すことを平方完成するといい,上にあげたのはそのもっとも簡単な例です。
x2ー2x+1=(x-1)2
x2+6x+9=(x+3)2
x2ー12x+36=(x-6)2
これらの因数分解ではすべて( )2という式が生み出されていますので,平方完成している,と言ってもいいワケです。
ただ,2次式がすべてこんなに都合よく平方完成できるわけではありません。当然,
x2+4x+5
のように,( )2という形に因数分解できないものもあるわけです。
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さて,x2+4x+5がなぜ( )2という形に因数分解できないかというと,定数項,つまり3番目が「5」という数字になっているからです。
3番目が「5」ではなく,「4」だったら上手くいったんですがねぇ・・・
だったらそのことを踏まえて,こんな変形はいかがでしょう。
x2+4x+5=x2+4x+4+1
=(x+2)2+1
「5」という数字が気に食わなかったので,これを「4+1」であるとみなし,この「4」を利用して無理やり( )2の形を作ってしまいました。きれいな因数分解にはならず,後ろに+1という余計なものが残ってしまいましたが,無理をしてでも( )2を生み出すことは,今後グラフを描いたりするときに非常に大きな価値があります。
他の例も見てみましょう。
x2ー8x+17=x2ー8x+16+1
※17の所が16なら上手くいく。
=(xー4)2+1
x2+10x+20=x2+10x+25ー5
※20の所が25なら上手くいく。
=(x+5)2ー5
考え方のポイントは,2番目までの項を見て
「3番目の数が○○だったら上手くいく」
という,○○の部分が分かるかどうか,にあります。
例えば,これくらいのレベルなら分かりやすいと思います。
x2+4x+○ → ○=4ならよい
x2ー6x+○ → ○=9ならよい
x2+10x+○ → ○=25ならよい
2番目の項(xの1次の項)を見れば○の部分がどんな数字であれば因数分解できるかを推理することはできそうです。
ところが,次のような場合はどうでしょう。
x2+24x+○ → ○=144ならよい
x2ー5x+○ → ○=25/4ならよい
x2+2ax+○ → ○=a2ならよい
2番目の項の係数が大きかったり,奇数だったり,はたまた文字だったりすると,急に分かりづらくなると思いませんか?
実際,平方完成でつまづく方のほとんどは,こうした奇数・文字係数の変形がうまくできずに諦めてしまうことが多いように思います。
でもご安心を。
2番目の項の係数を見て,それが奇数だろうが文字だろうが,必ず3番目に必要な数が何なのかが分かる「魔法の言葉」があるのです。
それは「半分の2乗」。
先ほど挙げた例で見てみましょう。
すでに気付いていた方もいたかもしれませんが,2番目の項の係数と○に入る数字の間にはある決まりがあるのです。
x2+4x+○ → ○=(4の半分)2=22=4ならよい
x2ー6x+○ → ○=(6の半分)2=32=9ならよい
x2+10x+○ → ○=(10の半分)2=52=25ならよい
頭の中で,2番目の項の係数を2で割ります。そしてそれを2乗した数が○の中に入るわけです。
これを踏まえて,難しい方の例も見てみると
x2+24x+○
→ ○=(24の半分)2=122=144ならよい
x2ー5x+○
→ ○=(5の半分)2=(5/2)2=25/4ならよい
※5の半分は2.5なので,2.52=6.25でも正解。
x2+2ax+○
→ ○=(2aの半分)2=a2=a2ならよい
となります。少し理解しやすくなったと思いませんか?
上にも書いた通り5の半分は2.5でもあるので,○=6.25でも正解なのですが,小数にすると桁が増えてしまうので2乗の計算をするときにミスをしやすくなる場合があります。
aのような文字の場合はなおさら小数に頼ることはできませんから,奇数や文字を「半分」にするときは分数を利用して「1/2をかける」と考えることをお勧めします。
「半分の2乗」
このキーワードは平方完成を理解するために最も重要な考え方ですので,しっかり頭に入れておいてくださいね。
では,ここまでを整理しておさらいしましょう。
(例1) x2ー8x+17
① 2番目の項の係数を見て,3番目が何だったら上手くいくか考える。
→ (8の半分の2乗)=42=16
② 3番目の数を,①の数とその他の残り物に分ける
→ x2ー8x+17=x2ー8x+16+1
③ 残り物以外の3つの項を因数分解する
→ x2ー8x+16+1=(x-4)2+1 ・・・完成!!
(例2) x2+5x+7
① 2番目の項の係数を見て,3番目が何だったら上手くいくか考える。
→ (5の半分の2乗)=(5/2)2=25/4
※半分=1/2倍。分数で表すのがおすすめ!
② 3番目の数を,①の数とその他の残り物に分ける
→ x2+5x+7=x2ー8x+25/4+3/4
※分数の足し算・引き算必要。ちょっと面倒ですね。
③ 残り物以外の3つの項を因数分解する
→ x2ー8x+25/4+3/4=(x-5/2)2+3/4 ・・・完成!!
(例3) x2ー2ax+3a2
① 2番目の項の係数を見て,3番目が何だったら上手くいくか考える。
→ (2aの半分の2乗)=a2=a2
※xという文字に着目するので「2a」の部分が丸ごと数字扱いです。
② 3番目の数を,①の数とその他の残り物に分ける
→ x2ー2ax+3a2=x2ー2ax+a2+2a2
③ 残り物以外の3つの項を因数分解する
→ x2ー2ax+a2+2a2=(x-a)2+2a2 ・・・完成!!
(例1)が最も基本的な平方完成です。最低限これが出来なければ他のもの出来るようになりません。
まずはこの(例1)をしっかりと理解することが大切です。
(例2)になると急に難しくなりますね。平方完成が苦手という方のほとんどは,このタイプでつまづいてしまっているようです。奇数を半分にするときに分数を使うのがポイントなのですが,手順の②で残り物を分けるところ,手順の③で前3つの項を因数分解するところも意外と難しいと思います。
(例3)は初心者にはかなりレベルが高く,中上級者向けでしょう。入試問題でもよく見かける変形なので,いきなりできるようになろうと思わないことです。逆に言えばこのレベルまでできるようになれば,平方完成は極めたと言っても大丈夫でしょう。
ここまで説明してきましたが,問題によっては難しい部分も結構ありました。奇数や分数,文字が出てくるともうお手上げ,計算がややこしくて頭の中がパンクしそう・・・と思ったかもしれません。
でも大丈夫。
この記事のタイトルは「平方完成が簡単にできるようになる方法」です。
実はここまではあくまで平方完成の「理論」部分なのです。
ちゃんと簡単に計算する方法があり,あまり深く考えず機械的に手を動かしていけばどんな複雑なものでもできるテクニックがありますので,次回の記事ではそれを紹介します。
テクニックだけ学ぶより,理屈が分かった方が達成感があるでしょう?
次回,実践編へと続きます。
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