コピー用紙の辺の比は√2 ~半分に折っても相似な関係

数学まるかじり

1.コピー用紙の縦横比は√2

 

有名な話かもしれませんが,コピー用紙の規格はどのようになっているかご存知でしょうか?

 

 

A4の用紙が210mm×297mm。A3の用紙はA4の2枚分で,297mm×420mm。

 

 

B5の用紙が182mm×257mm。B4の用紙はB5の2枚分で,257mm×364mm。(B版についてはJIS規格のものです)

 

 

ずいぶん中途半端な長さを採用しているんだな,とお思いの方もいらっしゃるでしょうが,今回注目していただきたい点はそこではありません。

 

 

それぞれの紙の,縦横の比率なのです。

 

 

 

 

 

それぞれの紙において,縦の長さが横の長さの何倍なのかを計算してみると,ある一定の数値が見えてきます。

 

297÷210=1.414・・・

 

420÷297=1.414・・

 

257÷182=1.41・・・

 

364÷257=1.41・・・

 

誤差はもちろんありますが,どの紙も大体

 

「縦が横の1.41倍」

 

になっていることがお分かりだと思います。

 

 

この,1.41という数値,いったいどこから来たのでしょう?

 

 

う~ん・・・ この数の並び,どこかで見たような聞いたような・・・

 

 

 

ヒトヨヒトヨニヒトミゴロ・・・

 

 

実はこの1.41の正体は,世の中でも大変有名な数である,√2です。

 

 

√2=1.41421356・・・(ひとよひとよにひとみごろ・・・)

 

 

といえば,一度はどこかで聞いたことがおありでは?

 

 

そうなんです。実はコピー用紙などで使用される「A版」「B版」と呼ばれる紙は,すべて縦が横の√2倍になるように設計されているのです。

 

 

 

しかし,なぜなのでしょう?

 

 

 

確かに√2といえば有名な数ですし,知っている人もたくさんいるでしょうが,実際は1.41という中途半端な小数です。長さを測ったり,切ったりするときに,不便なような気がしますよね。

 

 

いっそのこと,「縦を横の2倍」と決めてしまったほうが,計算も楽だし,実用的でいいのに・・・

 

 

 

ところがそうしてしまうと,ぜんぜん実用的ではないのです。

 

 

 

 

2.半分に切っても縦横比が変わらないようになっている

 

コピー用紙の特徴は,「半分に切ると,次のサイズのコピー用紙ができる」という点です。

 

B4サイズのコピー用紙を半分に切ると,B5サイズのコピー用紙ができます。

A3を半分にすると,A4ができます。

 

元になる用紙を次々と半分に裁断することで,無駄も出ず,効率よく,たくさんの種類のコピー用紙を作成することができるわけです。

 

 

もしも,「縦が横の2倍」という用紙があったとしましょう。例えば,縦が20cm,横が10cmの用紙だとします。

 

 

この用紙を半分にすると縦が10cm,横が10cmの正方形の用紙ができます。

 

縦と横の長さが同じになってしまいました。元の用紙は縦横比が2:1だったのに,切ると1:1になってしまいます。

 

 

 

コピー用紙では「拡大,縮小」を頻繁に繰り返しますから,サイズが小さくなるたびに用紙の形が違ってしまっては,うまく印刷をすることができません。

 

 

上手に効率よく,拡大縮小を行うためには,半分に切る前と後とで,用紙の形が同じ,つまり「相似」でなければならないわけです。

 

 

 

では,なぜ√2倍だとうまくいくのでしょう?

 

ちょっと計算してみると,すぐに分かります。

 

 

 

いま,縦の長さが横の長さのx倍だということにしてみます。

横の長さが10(cm)だとすると,縦の長さは10x(cm)ということです。

 

この紙を半分に切ると,縦が10(cm),横が5x(cm)となります。

この用紙でも,縦が横のx倍になっていてほしいですね。ですから,

 

10÷5x=x

 

という式ができ,

 

10=5x2

 

2=2

 

x=√2

 

ということで,√2倍すれば,切る前と後でうまく相似が作れると分かるのです。

 

 

 

2.身近に潜んでいた√2,その働きに感謝!

 

コピー用紙の規格には,国際規格であるISOによるものと,日本独自の規格であるJISによるものとがあり,A版ではどちらも同じですが,B版では両者で少しサイズが異なっています。

 

もともとはドイツで考案されたISOによるサイズを日本が採用し,一部変更を加えたものなのだそうですが,日本で古来から使われていた古紙などの規格に近くするため,この√2という倍率を使わなかった時期もあるそうです。

 

しかし,コピーや出版物全盛の現代社会において,このコピー用紙の仕組みは実に便利で効率のいいものです。

 

資源を有効に活用し,少しでも無駄のないシステムを作りたかったというのが,森林大国ドイツでISO規格が考案された1つの理由だといわれています。

 

そのために数学が少し貢献していると考えると,うれしい気持ちになりますね。

 

 

皆様も今度,職場やコンビニでコピーをされる際は画面表示に注目してみてくださいね。

 

きっと,「141%」などの倍率表示を目にすることができると思います。

 

 

 

「おお,√2君,がんばってるね!」

 

 

 

と,ぜひ声をかけてあげてください。

 

 

ただし,ほんとに口に出してしまうと,周りの人がギョッとしますんで,心の中で・・・

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