1.そもそも,角度はどうやって決められた?
「角度」というものをを初めて習うのは小学校です。
分度器を使って角を測ることから始まり,コンパスでいろいろな角を作図したり,図形の性質を利用して角度を求めたりします。
ところで皆さん,直角は何度かご存知ですか?
馬鹿にするなと言われそうですが,もちろん答えは90度ですね。
ではお聞きしますが,どうして直角は90度なのかご存知ですか?
直角というのは,角の中でも基準となる,重要な角ですから,それを表す数値も「10」とか「100」とか,きれいな数字を使えばいいのに,どうして「90」などという中途半端な数が使われているのでしょう。
この質問を,私の受け持っているクラスの生徒たちに聞いてみたところ,
「角度は1周すると360度だから!(これを4で割って90度)」
と答えてくれた子がいました。
「じゃあ,何で1周したら360度って決まっているの?」
と聞くと「う~ん・・・」と考え込んでいましたが,
「1周すると360度」
ということに気がついたのは素晴らしいことでした。
私たちは地球という星に住んでいます。地球は太陽の周りを回っていますが,かつては地球の周りを太陽や星が回っていると考えられておりました。天動説ですね。
「太陽は地球の」周りを365日かけて回るわけですが,人類初期の頃の暦では,「約360日」と決められていましたので,太陽は1日1度,1年で一周して360度回る,と決められたとされています。
ですから,1周360度を4等分した90度が,直角を表すことになったわけです。(※諸説あります)
2.意外とたいしたことない坂道の角度,意外と大きい「1度」
角度を調べる上で,欠かせない道具が「分度器」です。
学生の頃に使っていた分度器をお持ちの方は,久しぶりに取り出して眺めていただきたいのですが,丸い形の円弧の上に,細かくメモリが刻んでありますよね。
このメモリを見ると「1度」という角度は,非常に小さな角度に感じます。
小学校の算数でも,「三角形の角が1度」なんていう図は見たことがありません。小さすぎて,教科書の中に図がかけないからでしょうか・
ところがこの「1度」意外と侮れない角度なのです。
車の運転をされる方は,「急勾配あり」という道路標識を見たことがあると思います。黄色のひし形標識で,「5%」とか「10%」とか書かれているアレです。
「10%の坂道」とは,100m進むと10m上がる
「5%の坂道」とは,100m進むと5m上がる
という意味です。
急勾配として知られる国道1号箱根峠の場合は,最大で13~14%の坂道になるそうですが,日本の国道の中で最も急な坂道として知られる東大阪市の国道308号,暗峠付近には,何と37%の坂道が存在するそうです。100m進むと37m上がる計算になります。
この標識では,坂道の傾きを「%」で表しているのですが,これらを角度で表現するとどれくらいになるのでしょう。
では,皆さんのお近くにある,急な坂道をご想像ください。
想像したら,次はその坂道が「何度くらいの坂道か」を予想してください。
50度くらい? いやいや,30度くらい?
その予想を持ったまま,以下お読みいただければと思います。
5%の坂道は,角度でいうと「約3度」
10%の坂道は,角度でいうと「約6度」
日本の国道で最も急な37%の坂道は,角度でいうと「約20度」
です。
どうです? 驚いてくださいましたか?
え!? その程度の角度しかないの!? と思われたのではないでしょうか。
実は,人間が感じる勾配と,実際の数値のしての角度には,随分と開きがあるのです。
先ほど皆さんの周りにある急な坂道を想像していただきましたが,おそらくほとんどの場合,10度(18%)より小さな角度の坂道だと思います。
「この坂道きついなァ・・・45度くらいありそうだ」
と思っても,実際は45度もありません。45度の坂道が目の前に現れたら,人間にはほとんど「崖」にしか見えません。
30度の坂道ですら,普通の自動車では上ることができません。上れたとしても,大変な恐怖を感じるはずです。ちなみに,30度の坂道は,%に直すと58%です。
電車にいたっては,1度か2度の坂道がやっとです。それを越える坂道は,特別なモーターや装置がないと上れません。ちなみに1度か2度の坂道は,%に直すと約3%です。
「たかが1度」の坂道も,実際に体験してみると,自転車で上るのにも少しきつい位,大きな勾配となってくるのです。
3.坂道の角度を測る方法,突き詰めていくと…
坂道の角度を測るのは簡単です
水を入れた水槽を,斜面に置くだけで測ることができます。
外側の容器は斜面に沿って傾きますが,中の水は水平に,まっすぐに張りますから,その差を分度器で測ればよいわけです。私もこの方法で,いろいろな坂道の角度を測りに行きました。生徒からはものすごく変な人扱いされていますけど…(笑) 最近はスマホのコンパスで,もっと手軽に測れるようになり,便利です。
しかし,いちいち水槽やスマホを持って測りに行かなくても,写真を撮って,ある部分の長さを図るだけで角度を調べる方法があります。
角度と長さを融合させた数学というものがあるのです。これを利用して計算すれば,さまざまな長さから,角度を割り出すことができます。
その数学とは,皆さんも一度は聞いたことのある(苦しめられたことのある)アレなのですが・・・
続きは,次回【角度を科学する(2)】でお話しましょう。
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