0で割るとはどういうこと?
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前回に引き続き,計算の不思議シリーズ(?)第2弾です。

0という数については,以前少しこの連載でも触れましたが,この数の発見は数学史に大きな影響を与えた出来事であると同時に,様々な厄介ごとが生まれる結果ともなりました。



0の性質はいろいろありますが,その中の1つに,

「なにと掛け算をしても答えは0」

というものがあります。


0は何倍したって0だし,どんな数を0倍しても0である,という,小学生でも知っている性質です。

しかし,この分かりやすくて簡単な性質のお陰で,私たちは大いに苦しむことになってしまうのです。

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問題です。

「0÷3」

の答えはいくらでしょう?

もちろん,0に決まっています。お菓子が全く何もないのだから,それを3人で分けても,何もない状態のまま,なんていう説明が出来ますね。


では,「3÷0」はいくらでしょうか?



「そんなもの,0に決まってるじゃないか!」



と,簡単に片付けようとしたそこのあなた!

事はそう簡単な話ではないのです。



実はこの答え,0ではないのです。



考えてみてください。3つのお菓子があって,それを「0人で分ける」というのはいったいどういうことなのか。

あるいは,3つのお菓子を,「0個ずつに分ける」というのはどういうことなのか。

0を含んだ割り算の中には,0が持つ底知れぬ恐ろしさが隠れ潜んでいるのです。

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「3÷0」の答え,0でなければいったいいくらなんだ? と気になられるでしょうが,このような説明をしてみましょう。


例えば6÷3の答えは,次の式の( )の中の数と同じです。

 3×( )=6

( )の中に入る数は2ですから,6÷3の答えは2です。

27÷3の答えは,

 3×( )=27

の( )の中に入る数と同じです。つまり,答えは9です。



A÷Bという割り算の答えが知りたければ,B×( )=Aという式を作り,( )の中に何が入るか考えればよいことになりますね。

0÷3の答えは,3×( )=0という式を考えれば,0だとすぐ分かります。



では,問題の「3÷0」の場合はどうなるでしょうか。

この答えは,「0×( )=3」という式を考えれば分かるはずなのですが・・・



・・・そうです。気付いていただけたでしょうか?

そんな数などない!ということに。

0に何をかけたって,答えは0になるはずです。3になることは絶対にありません。

つまり,「0×( )=3」に当てはまる数など,この世にはありません。

ということで,3÷0の答えは,「ない」*1 というのが正解になります。

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0の入った割り算では,

 @ 割られる数が0なら,答えは0
 A 割る数が0なら,答えはない*1

という,奇妙な現象が起こることになるわけですが,では,この場合はどうなるのでしょう?



「0÷0」



「もう付き合ってられるか!」

なんて読者の方が離れていく姿が目に浮かびますが,もう少しお付き合いください。(笑) 今度はちゃんと答えがありますから。


さて,これも先ほどのように,式を使って考えてみることにしましょう。

0÷0の答えは,次の式の( )に入る数と同じになります。


 0×( )=0


さあ,答えは何でしょうか?



「・・・何でもいいのでは???」


と思ったあなた。大正解。答えは「どんな数でもよい」となります。*2

つまり,

 0÷0=6
 0÷0=100
 0÷0=−7

などなど,全て正解ということになる*2わけです。

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以上,

  A÷0(ただし,Aは0以外)・・・答えなし
  0÷0・・・何でも良い

ということを説明してきました*1*2が,どうもすっきりしないなァ,と思ってらっしゃる方も多いのではないでしょうか?


理屈の上では分かるんだけれども,感覚的にピンとこないというか。


そこで,小学生でも分かるような(多分・・・)説明をご用意しました。



【3÷0に答えがない理由】*1

3個のケーキを0個ずつに分けるということは,3個のケーキを目にも見えないくらい小さなサイズにみじん切りにするということだ。だから,いくつに分割できたかなんて,多すぎて数えられない*1



【0÷0の答えが何でもよい理由】*2

目に見えないくらい小さな,ホコリのようなケーキのかけらがある。0を0で割るということは,このかけらを更に目に見えないくらいのサイズに分けるということだ。どうせ既に目に見えない位小さいのだから,この後これを2つに分けようが,3つに分けようが,100個に分けようが,見えないことに変わりはない。

どうでしょうか? ちょっとこじつけに近い説明ですかね?


高校で理系分野に進む人は,「数学3」という教科を学習するはずです。その中で,「極限」という分野を学べば,今回の話は納得がいくと思います。実は上に挙げた2つの(こじつけのような)説明も,極限という分野で高校生が大真面目に学習する内容を,噛み砕いて表現したものです。

高校生とか,理系とか,極限とか,何だか話のレベルが飛躍して驚いた方もいるかも知れませんが,0で何かを割る,ということは,それくらい深くて厄介な話なのです。

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もう満腹,という方もいらっしゃるでしょうが,0は厄介だよ,という話をもう一つ。

「2」を2回掛け算すると,2×2で「4」になりますね。

「2」を3回掛け算すると,2×2×2で「8」。

「2」を6回掛け算すると,ちょっと計算が大変ですが,答えは「64」

「2」を1回掛け算すると,式がただの 2 となって,答えは「2」



では,「2」を0回掛け算するといくらになるでしょう?




お怒りの声が聞こえる前に,退散することに致します。







注釈
*1 代数的には「a÷0」の解は存在しない,でよいのですが,0を「限りなく絶対値が0に近い数」と考えると,疑似的に解を想定することができます。すなわち,「x→0のとき,a÷x→?」という,極限の考え方です。限りなく0に近い数を「疑似的に」0と書かせてもらうならば,「a÷0=∞」と考えることができ,解析的には解と見做せないこともありません。本文中に「多すぎて数えられない」と記載したのは,これを意識したものです。

*2 上記と同じく,代数的には「0÷0」の解は存在しませんが,この0を「限りなく0に近い数」と考えるとどうなるか,という発想で本文では話をしています。つまり,「x→0かつy→0のとき,x÷y→?」という考え方です。
 この極限は,いわゆる「不定形」と呼ばれる形式になり,解が確定しません。例えば
    x÷x2→0      6x÷x→6      100x2÷x2=100      −7x5÷x5=−7
のような具合です。割る数と割られる数が,どのような振る舞いで0に近づくかによって,極限は変わってきます。表現を変えれば,「0に近づくもの÷0に近づくもの」の極限は,一般にどんな値になるか分かりません。このことをもって,本文では「0÷0の答えは何でもよい」と書かせていただきました。

文末の「例え話」をもって,極限の考え方で解釈しているという意図が伝わるかと思っておりましたが,*1 と*2で代数・解析的な解釈を混在して記載してしまったため,数学的に飛躍のある,整合性のない表現となってしまいました。申し訳ありません。


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