線分は点の集まりである,ということは,どこかで聞いたことがあるでしょう。
無数の点が集まって線が出来,無数の線が集まって面が出来る,という考え方は,数学の世界に限らず,いろいろな分野で当たり前のこととして,納得されていることだと思います。
ここで問題です。幅が1cmの線分と,2cmの線分,どちらがたくさんの点を含んでいるでしょうか?
簡単な話ですね。2cmの方です。
・・・と言いたいんですがね。残念ながら同じなんです。
2つの集団が1列に並んでいたとして,お互いに握手をするとします。お互いが1人の相手と握手をし,誰一人余らなかったとしたら,その集団の人数は等しいと言えます。
この点,異論は無いですね?
幅1cmの線分上にいる点全部が,2cm上の点全部と,誰一人余ることなく「握手」出来る,といえれば,両線分上の点の個数は等しいと言えます。
数直線上に,1cm,2cmの線分を,左端が原点に来るように置いたとしましょう。そして,1cm上の,「n」という座標をもった点が,2cm上の「2n」という座標を持った点と握手するとしましょう。
例えば1cm上の「0.3」という点は,2cm上の「0.6」という点と握手します。2cm上の「1.7」という点は,1cm上の「0.85」という点と握手します。
こうすると,2cm上のどの点も,1cm上の誰かと,必ず1回握手が出来ます。
つまり,どちらの線分上にも,同じ数だけ点が存在することになるわけです。
もちろん,2cmの線分は,1cmの線分が2つ集まったものです。1cm上に点が「∞(無限大)個」あるとすると,2cm上には「2∞個」あるという考え方も出来るでしょう。
ここで問題なのは,「∞」とは何か,ということです。「限りなく大きい数」とか,「数えられないほど多数」という意味があります。
どうせものすごく大きい数なのですから,「∞」も「∞+1」も大して変わりませんよね。
「∞+2」でも大して変わりませんし,「∞+1000」でも大して変わりません。だから,いずれも,「∞」という一言で片付けることが出来ます。
同じ理由で,「∞」も「2∞」も大して変わらないということが出来ます。つまり,「3∞」だろうが,「100∞」だろうが,どうせ「ものすごく大きい数」なのですから,「∞」という書き方で済ませることが出来るわけです。
だから,1cmだろうが2cmだろうが,その上の点は同じ「∞」という個数をもっている,と片付けてよいわけです。
ただ,「∞」にもレベルがあります。
自然数の個数も∞,実数の個数も∞ですが,この2つの「∞」はレベルが違い,はっきりと,「実数の方が多い」ということが出来ます。これは,お互いに握手をすると,実数の方が余ってしまう,という言い方で説明が出来ます。
∞の「レベル」は,数学用語で「位数」と呼ばれています。興味のある人は「初等解析学」という分野になりますので,調べてみるといいでしょう。
あっさりと説明してきましたが,正直なところ納得していただけたかはわかりません。
このHPでも無限についてはよく取り上げていますが(さあ,無限の彼方へ ~無限とは何か? 等)無限が絡むと人間の直感的な理解が追いつかなくなることが増えます。
「∞」という概念は非常に抽象的で,昔の人は大変苦しめられました。
歴史に名を遺す,有名な数学者たちでさえ,その例外ではありません。例えばカントールという数学者の悲運な人生はよく知られるところです。
あまりの難しさに,∞の出てくる数学は考えないようにしよう,と決めた数学の派閥もあったほどですから・・・
現在でも無限大を扱うときは細心の注意を払わないと,いろいろな矛盾に陥ることがあります。
最後に問題です。1cmの線分と,1cm四方の正方形の内部,どちらがたくさんの点を含んでいるでしょうか?
まさかどっちも同じ個数なんて言わないでしょうね?・・・ 答えは・・・
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