三角形の五心 ~重心・内心・外心・垂心・傍心

数学まるかじり
1 円の中心はすぐ分かる。では三角形の「中心」は?

 

円があったとして,この中心はどこですかと言われたら,誰でも同じようなところを指差すことができるはずです。

 

円とその中心とは,お互いに強いつながりを持った関係にあります。

 

 

正六角形の中心はどこですか?と聞かれたときも,割と簡単に答えることができるのではないでしょうか。

 

3本の長い対角線で正六角形を6枚の正三角形に分けたとき,中央にできる交点が正六角形の中心だと言えるでしょう。

 

 

では特になんの特徴もない,普通の三角形があったとします。正三角形とか,直角三角形とかいう,きれいな三角形でなくても構いません。

 

 

この三角形の「中心」はどこですか?

 

と尋ねられたら,どのように答えればよいのでしょうか。

 

 

 

 

2 何を基準に「まんなか」と考えるのか

 

最近は少なくなってきたそうですが,実はこの問題,一昔前までは小・中学校の算数・数学の授業でよく扱われてきたテーマです。

 

 

中心とは,「まんなか」,「物事の集中する場所」,「重要な意味をもつ場所」といった意味で用いられる言葉ですから,

 

 

「三角形の中心」

 

 

とは,「三角形において,重要な意味をもつ点」と考えてよさそうに思います。

 

問題は,何をもって重要だと考えるかになります。

 

 

小学生に三角形の板を渡して考えさせると,多くの子どもたちが1本の指で三角形を下から支えて,バランスをとろうとするんだそうです。

 

 

この場合はヤジロベーのように,ぴたりと支えることができる点を「重要な点」だと考えることになります。

 

 

これは三角形の重さが集まる点ということで「重心」と呼ばれます。

 

先ほどの円や正六角形の中心も,この「重心」となっていますので,円や正六角形を指1本で支えることができます。

 

 

「重心」は,三角形の「中心」と呼ぶにふさわしい点の一つだといえます。

 

重心は,いちいち指で支えて確かめなくても,紙の上で作図することができます。

 

三角形の3つの頂点から,その向かい側にある辺の中点に向かってそれぞれ線を引くと,見事に1点で交わります。ここが重心となることが知られています。

 

記事「三角形の重心,四角形の重心・・・」参照

 

 

 

 

ところで,重心とは重さに着目したときの中心ですが,着目の仕方は他にもあります。

 

 

中心というからには,円が関係していてほしい

 

という考え方もできます。

 

正六角形の中心にコンパスをあてて円をかくと,正六角形の頂点は全て円周の上に乗り,正六角形は見事に円に内接します。

 

このように,図形を包み込む円のことを「外接円」といいますが,この外接円の中心を,その図形の中心だと考えるとどうでしょう。

 

 

でたらめに書いた三角形の場合,重心は外接円の中心にはなりません。

 

重心にコンパスをあてて円をかいても,三角形の頂点の全てが円周の上には乗らないのです。

 

外接円の中心となる点を「外心」と呼びます。

 

三角形の外心は,重心とはまた別の位置にあります。詳しい説明は省きますが,3つの辺の垂直二等分線が交わったところにあります。

 

 

外接円とはその図形を包む大きな円のことでしたが,その逆に,図形の内側にぴたりと接する小さな円もあります。

 

これは「内接円」と呼ばれます。

 

内接円の中心を「内心」といいます。この内心は,重心,外心とはまた異なる点です。3つの角の二等分線が交わるところにあります。

 

 

 

3 三角形には5つの心がある

何だか中心になりそうなものが3つも出てきてややこしくなったな,とお思いでしょうね。

 

視点を変えると,何が重要かも変わってきますので,それに伴っていくつも中心が出てくるわけですが,誠に恐縮です。あと2つあるのです。

 

 

1つは「垂心」。

 

これは,各頂点から向かい合う辺に向かって垂線を引き,それらが交わった点です。

 

もう一つは「傍心」。

 

三角形の3つの辺を直線だと考えて延長したとき,3本の直線の全てに接する円が4個ありますが(三角形の中に1つ,外に3つ),この外側にできる円の中心になります。

 

 

重心,外心,内心,垂心,傍心。

 

この5つの「中心」を,三角形の五心と呼んでいます。

 

 

 

 

中心の「心」は,「芯」とかかれる場合もあるようです。

 

 

この場合は「ものの中,中央」という意味で,やや物理的な意味が強くなるようですが,私は「心」の方が好きです。

 

三角形には「心」がある。しかも5つも。

 

 

なんだか,無味乾燥な幾何学図形にとても暖かみを感じませんか?

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